賃貸借契約のチェックポイント

ポイント7:物件の明け渡しと原状回復について

最近、契約を終了し、物件を明け渡す際、その原状回復についてもトラブルが多発しています。そこで、まずこの問題に入る前に、基本的な賃貸人の義務と、賃借人の義務を確認しておく必要があります。

【賃貸人の基本的義務】
①賃借人が目的物を使用し、収益することに適した状態にする義務。
②賃借人が目的物を使用し、収益することに必要な修繕をする義務。
③特約がない限り、賃借人が目的物のために賃借人の同意を得て支出した費用を償還する義務。

【賃借人の基本的義務】
①賃借物の賃料を賃貸人に支払う義務。
②賃借物を無断で譲渡、転貸したり、無断で用途変更しない義務。
③賃借物を善管保管し、原状で変換する義務。


1. 原状回復の法的義務


法的に賃借人は『善管注意義務』と『原状回復義務』があります。
善管注意義務とは『善良なる管理者の注意義務』を略したもので、それは社会通念上、その状況に応じて普通程度に要求される注意義務のことです。この義務に欠けると過失があったと見なされたり、また賃借人の責めに帰すべき事由となって敷金での精
算、または原状回復の対象となります。民法第400条及び第827条をご参照してください。

この善管注意義務をもとに、賃借人は民法第598条、及び第616条をもとに対象物件内の収去権と収去義務を負っています。すなわち賃貸借が終了した際、賃借人は賃借物件の返還に当たって賃借物に附加したものは原則として、すべてこれを収去し明け渡さなければなりません。これがすなわち賃借人の原状回復義務です。この賃借人の収去義務及び原状回復義務が、貸主には原状回復請求権となります。


2. 原状回復の範囲


では賃借人の具体的な原状回復の範囲は?となると、明確に範囲を示すことは難しいのが現実です。
ちなみに賃貸マンションなどの住宅の場合は、国土交通省住宅局総合整備課が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を、また東京都都市整備局が「賃貸住宅紛争防止条例」の中で現状回復ラインを示しております。
ただし、国交省が制定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は一般消費者を対象とする賃貸マンションなどを対象としたものです。よって賃貸オフィスなど事業用不動産の賃貸の場合、対象物件ごとにそれぞれの事情があるために契約書で規定する特約が優先され、ガイドラインの適用はありません。
因みに、原状回復の法的範囲は次の通りです。

【賃借人負担】
①善管注意義務を怠った箇所、または善管管理義務に違反した箇所。
②同居人や来客が不注意などによって毀損・汚損した箇所。
③賃貸人に無断で施した内装、及び設備。
④賃貸人から原状に回復することを前提に施した内装・及び設備。
⑤その他、ケースバイケース。


【賃貸人負担】
①通常の使用によって、また時間の経過によって、また日照などによって当然にして生じ得る汚損・損耗箇所(自然損耗)。
②雨漏りなど貸主側が負担すべき事柄から生じた汚損・損耗箇所。
③その他、ケースバイケース。

※ 註:その他ケースバイケースとは実態を見て判断せざるを得ないもの。
例えば、タバコのヤニの汚れ。ニンニクなどの特別な悪臭。結露による汚損・損耗(善管注意義務違反によるものか、構造上によるものか)。
厨房設備や洗面台・お風呂の汚損・損耗(善感義務違反によるものか、それとも自然損耗か)など・・・・・。





ポイント1:契約面積についてポイント2:契約期間の更新と終了ポイント3:更新料についてポイント4:共益費と管理費の違いポイント5:敷金と保証金の違いポイント6:解約時償却と敷引きについてポイント7:物件の明け渡しと原状回復について

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