賃貸借契約のチェックポイント

ポイント6:解約時償却と敷引きについて

期間満了での解約。また期間途中での解約。その際の敷金、または保証金からの解約時償却とは何か。
そして敷引きとは何か。これについても法定で争われています。
では、それについて述べます。

1. 保証金・または敷金の解約時償却


敷金または保証金の解約時償却とは、賃貸借契約の終了に際して賃料の○ヶ月分を、または保証金の○%を無条件で差し引くことをいいます。その場合、差し引いた残りの敷金、または保証金が原状回復など、他の債務補償担保となります。
では、償却とは何か。それはつぎのような考え方に基づいています。

①貸室を利用させていただいたことの礼金
②貸室の善管義務に反した部分の補償
③更新料が無い場合、更新料免除の謝礼
④契約終了後の空室期間や時期テナント募集に係わる費用の補償

そこで、オフィスなど、事業用の建物賃貸借契約で取り交わされる保証金の解約時償却は法的に有効とされます。なぜなら保証金は金銭消費貸借と見なされているからです。 一方、敷金の場合、解約時償却は賃借人が契約上発生する家賃の支払債務、建物の毀損汚損債務、建物の用法違反による損害債務などではないと見なし、無効という考え方が大勢です。そして、平成21年6月4日名古屋簡易裁判所の判決では消費者契約法第10条によって違法とされました。しかし今、大阪や北九州などで商慣習として行われていた敷金(または保証金)からの敷引きが、最高裁で一部認められたことによって、契約書が優先するという考え方が大勢になりつつあります。それについて次に述べます。


2. 敷引き


敷引きとは、大阪や北九州市などの地方で行われている商慣習で、賃貸借契約の終了に際し、敷金(または保証金)から賃料の○ヶ月分、または○円を無条件で差し引くことをいいます。
この敷引きは東京など首都圏での解約時償却と内容的にほぼ同じものです。
大阪や北九州市などでも最近は敷金0、礼金0などの賃貸物件も多く出はじめていますが、これまでは首都圏よりも敷金の額は高く、また敷引きの額も高いのが特徴でした。例えば2LDKの物件で家賃8万円、敷金55万円、敷引き35万円というように。
そこで敷引きが法的に有効か無効かで争われました。その結果、平成23年3月24日最高裁判決は賃料の2倍から3.5倍の敷引きは有効としました。ただしその場合、原状回復については国土交通省のガイドラインに準じて費用の全てを負担する必要はなく、その40%位の負担で良いという判決でした。
また平成23年7月12日最高裁判所判決は賃料の3.5倍の敷引きは有効としました。これは地域の商習慣を認めたもので、それでも賃料の3.5倍までというものでした。しかしこのとき一人の岡部喜代子裁判官が「この特約は無効」という反対意見を述べています。
よって、「敷引き」または「敷金からの解約時償却」は法的に有効か、無効かは状況次第ということになり、これが全て法律違反ではなくなったのであります。





ポイント1:契約面積についてポイント2:契約期間の更新と終了ポイント3:更新料についてポイント4:共益費と管理費の違いポイント5:敷金と保証金の違いポイント6:解約時償却と敷引きについてポイント7:物件の明け渡しと原状回復について

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