賃貸借契約のチェックポイント

ポイント3:更新料について

更新料は借地借家法の性質と消費者契約法第10条の規定をもとに有効か無効か?これは今も法定で争われています。その問題の要点について述べます。

1. 更新料の法的性質


契約期間の満了に際し、契約を継続する場合、更新には「合意更新」と「法定更新(自動更新を含む)」があるのはポイント2で述べた通りです。
しかしその更新の際に更新料を取るのは無効であるという人と、いや有効であるという人がいます。

まず、更新料は無効であるという人の主張はつぎの2点です。
①借地借家法は借手の保護法である。よって更新料そのものが借地法の精神に違反するので、あってはならないものである。
②平成13年4月1日施行の消費者契約法第10条『民法、商法(明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする』をもとに、更新料は無効である。

これに対し、有効であるとする人たちはつぎの5点を法的性質に上げています。
①更新料は貸主の更新拒絶権放棄の対価。
②更新料は借主の賃借権の強化の対価(=権利金の充填)。
③更新料は敷金目減りの補充。
④更新料は賃料の補充。
⑤更新料は更新契約の事務手数料。

そして更新料を払え、払わないで法定で争った結果、その内容によって裁判所の判断が分かれているのが実情です。


2. 契約書に更新料の特約がない場合


建物の賃貸借契約書に更新料の特約がない場合、当然のこと、借主には更新料を払う義務はありません。
しかし、建物の賃貸契約書に更新料の特約がなくても法定更新する際に貸主が商慣行であるとして更新料を請求してくる場合があります。
この場合、借主に更新料を支払わなければならない義務が、商慣行としてあるかどうかが争われます。これについて土地の賃貸借契約で争った最高裁判所昭和51年10月1日判決は「借地契約に更新料の特約がない限り更新料の請求はできない」としました。

従って、土地であっても建物であっても契約書に更新料の特約が無い場合には、貸主は借手に更新料の請求はできません。
さらにこの場合、平成13年から施行された消費者契約法第10条によっても、貸主は借主に請求できません。よって借主は契約書に特約がない限り貸主に請求されても払わなくて良いのです。
しかし、弊社では土地の賃貸借契約の場合、仮に契約書に更新料の特約が無くても、要求されたら商慣行を勘案し、少しでも払うべきであるとアドバイスしております。なぜなら、将来、借地権の譲渡、また用途変更などの際に円満な話し合いができる可能性が大であるからです。

ちなみに、借地権の場合、更新料は借地権価格の5%前後が一般的です。


3. 契約書に更新料の特約がある場合


賃貸契約書に更新料の特約がある場合にはいろいろと問題が生じています。その争いのほとんどは賃貸マンションやアパートに限られているのですが、まず、借り手側の主張は本項の(1)で述べたように、つぎの通りです。
①契約書で合意していても、更新料そのものが借手の保護法である借地借家法の精神に根本的に違反しているために払わなくても良い。
②契約そのものが消費者契約法第10条(平成13年4月1日施行)に違反しているために、払わなくても良い。
これに対し、貸主側の主張はつぎの通りです。
①貸主の更新拒絶権放棄の対価である。
②借主の賃借権の強化の対価(=権利金の充填)である。
③敷金目減りの補充である。
④賃料の補充である。
⑤更新契約の事務手数料である。

そして、判決はその実態によってつぎのよう分かれています。
①2011年4月27日。大阪高等裁判所は、更新料は有効とした一審の京都地方裁判所の判決を取り消し、消費者契約法第10条により無効とし、更新料の返還を命じる。 ちなみに大阪高等裁判所での更新料無効判決はこれで4例目。
②2011年7月15日。最高裁判所第2小法廷は大阪高等裁判所で2009年8月27日と2010年2月24日に無効とした判決と、2009年10月29日に有効とした判決の3事件を一括審議。その結果、『賃貸住宅の契約を更新の際、賃料と比して高すぎるという事情がない限り、更新料は有効である』と判決。
ちなみに、これまでの大阪高等裁判所の判決はつぎの通り。
・2009年8月27日。契約期間1年で賃料2.2ヶ月の更新料を無効。
・2009年10月29日。契約期間2年で2ヶ月の更新料を有効。
・2010年2月24日。契約期間1年で賃料2ヶ月の更新料を無効。
・2010年5月27日。契約期間2年で賃料2ヶ月の更新料を無効。

以上の判例から見えることは、近隣に比して特別に賃料が安い場合には有効ということです。
仮に、賃料が特別に安いとしても、2年で賃料の2ヶ月と言うことは、その月に当月の負担分を合わせると、賃料の3ヶ月を支払わなければならないことになり、これは消費者にとっては相当な負担です。ちょっと、関東では考えられません。


4. では、更新料を払わなかった場合


では契約書に更新料の特約があっても借主が更新料を払わなかった場合、どうなるか。貸主は契約不履行で解約できるのか、どうなのかという問題について述べます。

まず結論から言うと解約できません。ゆえに更新料はトラブルのもととなるのです。従って大手不動産会社では更新料の特約はしません。弊社も特別な場合を除き、更新料は取らないこととしています。


5. 更新料は実質賃料の一部である


税務上、更新料は賃料の一部と見なされます。従って住宅の場合は消費税がかかりませんが、オフィスなどの事業用の場合は対象になります。

よって、当然のこと更新料は実質賃料の一部となります。仮に名目賃料が安くても、1年ごと、また2年ごとに更新料を払うならば、当然のこと実質賃料が高いことになります。従って、契約面積や共益費などと合わせ、詳しくチェックすべき重要な項目の一つです。





ポイント1:契約面積についてポイント2:契約期間の更新と終了ポイント3:更新料についてポイント4:共益費と管理費の違いポイント5:敷金と保証金の違いポイント6:解約時償却と敷引きについてポイント7:物件の明け渡しと原状回復について

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