2019.05.27

個人事業主だから会計ソフトは使わなくてもいいと思っている方へ

最近では、比較的安価な会計ソフトも販売されていますが、個人事業主の方の中には、法人でなければ導入するメリットは薄いと思っている方が多いようです。
しかし、会計ソフトは、個人事業主の方の税金対策、効率化にも威力を発揮してくれます。

身近になった会計ソフト

会計ソフトは、かつては高価で導入も難しく、個人事業主にとっては縁の薄いものでした。

しかし、21世紀に入って、IT技術や通信環境が発展したことにより、状況は大きく変わりました。
従来は会計ソフトをパソコンにインストールする必要がありましたが、現在ではインターネットを通じたクラウドサービスで会計ソフトが提供されるようになりました。

コンピュータの知識がなくても、簡単に会計ソフトを使える環境が整っているのです。

個人事業主が会計ソフトを導入するメリット

個人事業主が、会計ソフトを導入する場合のメリットには、以下の2つがあります。
  1. 経営的視点
  2. 税務申告上の視点

(1)経営的視点から見たメリット

(1-1)事業の実体を数字で明確に示してくれる

経営的視点から見た、会計ソフトを使用する大きなメリットは、事業を伸ばしていく上において大切な事業実体を数字で如実に表してくれることです。
会計ソフトを使うと、利益は充分に出ているか、資金面に問題はないか、商品回転や在庫水準に問題はないかなどを、数字で把握しやすくなります。
この数字があることで、個人事業としての将来の計画、今後の経営において力を入れるべき点を判断する際の大きな助けになるでしょう。

(1-2)銀行融資に必要な決算書を簡単に作成できる

事業拡大のために銀行などの金融機関から事業資金を借り入れる場合、決算書をかならず提出しなくてはなりません。
しかし、後にも述べますが、個人事業主にとって決算書の作成は大変な労力を必要とします。
会計ソフトを利用することで、この決算書の作成にかかる時間や手間を大幅に少なくすることができます。

(2)税務上から見たメリット

個人事業主にとって、日々悩みの種になるのが会計処理の問題です。
特に、税務申告の季節になると決算書の作成に追われる方も多いのではないでしょうか。
会計ソフトを利用すれば、安価にこの問題を解決できます。

(2-1)会計処理の効率化

最近普及しているクラウド型会計ソフトでは、非常に低コストで導入が可能な上に、入力も簡単なため、個人事業に負担を与えずに効率的に会計処理を行うことができます。
会計ソフトの利用に、特別な会計知識は必要ありません。
日常的にコンピュータを利用している人なら、誰でも操作できるように簡単に作られています。

(2-2)税理士コストの削減

会計処理を税理士に任せてしまう場合、月5万円ほどの高いコストを支払い、さらに決算や確定申告においては、別途で手数料を要求されてしまいます。
しかし、会計ソフトでしたら、基本的にソフトの利用料金のみで決算や確定申告を済ませることができます。

(2-3)税金対策

会計ソフトを使えば、複式簿記の青色申告も簡単に
個人事業主の確定申告は、青色申告を選択している場合が多いですが、青色申告の税務上の一番のメリットは青色申告特別控除を認めてもらえることです。
特に、複式簿記を導入している場合、65万円の青色申告特別控除を受けることができるのです。一方、現金出納帳などを利用した場合は、10万円しか控除が認められません。

現在、ほとんどの会計ソフトは複式簿記に対応しています。
したがって、会計ソフトを導入すれば、基本的に青色申告特別控除額は通常よりも55万円以上多くなるのです。
会計ソフトを利用して複式簿記の青色申告を行った際の税額例
たとえば、事業利益が605万円、経費が150万円、その他控除が60万円の場合、複式簿記とそれ以外の青色申告をした際の所得税の違いは以下のようになります。
控除額が65万円になることで、11万円もの節税効果が生まれます。
事業の利益
(総収入)
経費 その他
控除
青色申告
特別控除
課税対象
金額
税率 控除額 税額
複式簿記
¥6,050,000
¥1,500,000
¥600,000
¥650,000
¥3,300,000
10%
¥97,500
¥232,500
それ以外
¥100,000
¥3,850,000
20%
¥427,500
¥342,500
差額 ¥-110,000
(参考)所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下
5%
¥0
195万円を超え330万円以下
10%
¥97,500
330万円を超え695万円以下
20%
¥427,500
695万円を超え900万円以下
23%
¥636,000
900万円を超え1,800万円以下
33%
¥1,536,000
1,800万円を超え4,000万円以下
40%
¥2,796,000
4,000万円超
45%
¥4,796,000
参考:所得税の税率│所得税│国税庁

個人事業向け会計ソフトの種類

個人事業向けの会計ソフトには、オンラインで行うクラウド型と、パソコンなどにインストールするオンプレミス型があります。
どちらも、伝票をソフトに入力するだけで、会計知識がなくても会計処理から確定申告用の決算書、申告書まで計算してくれるソフトです。

法律改正にも対応するクラウド型がおすすめ

クラウド型の会計ソフトは、パソコンなどにインストールする必要がありません。
インストールの手間がなく簡単に始められるのはもちろん、法律や税率が変わった場合でも、常に最新の状態に自動的に対応されるのが利点です。
オンプレミス型の会計ソフトだと、法律や税率の変更の際にはソフトの追加インストールが必要です。
都度対応する手間がかかることと、バージョンによっては有料アップグレードが必要になる場合もあるので、近年ではクラウド型のほうが有利だと言えます。
また、クラウド型の会計ソフトはスマホ、タブレットなどからも入力できるので、移動の途中での経費入力も可能になります。

安価な会計ソフトの例

導入しやすい安価な会計ソフトとしては、次のようなソフトがあります。

クラウド型会計ソフト

サービス名称 利用料金 スマートフォン入力対応
マネーフォワード 月額0~800円
(利用サービスによって変動)
やよいのオンライン 白色申告のみ:0円
青色申告:年額8,000円
freee(フリー) 月額980円

オンプレミス型会計ソフト

ソフト名 価格
やよいの青色申告
¥12,000
みんなの青色申告
¥9,800
ツカエル青色申告
¥7,800

まとめ

個人事業であっても、継続して事業をおこない、伸ばしていくには、手間をかけずに事業を数値化して、将来に対する課題を見つけていく必要があります。そのためには、安価で手間もかからない会計ソフトを導入していくことがおすすめです。
会計ソフトを導入することで、複式簿記で青色申告特別控除を受けて節税したり、銀行の信用を得て、成長のための資金を確保していくことで、事業成長に繋げることも可能になります。