2019.04.16

勘定科目の「元入金」って何?


元入金(もといれきん)とは

個人事業主は仕事(事業)とプライベートが曖昧になりがちです。(個人事業主は事業とプライベートで資金を自由にやり取りすることが可能です)
しかしながら会計的に事業とプライベートを明確に分ける必要が出てきます。
そこで元入金という勘定科目を使用します。
法人が会社を設立する際に出資する資本金と同じように、個人事業主やフリーランスが開業するときに事業資金としてお金を確保します。

(1) 元入金の意味:開業時の資金

元入金は個人事業主のみが使用する勘定科目で、法人でいうところの資本金にあたります。
資本金とは、法人が事業をスタートするときに株主から集めた開業資金や準備金です。
個人の場合には事業主自身があらかじめ用意した開業資金や準備金が元入金となります。

尚、法人会計では元入金は使用しないため、資本金とは本質的に大きく扱いが異なります。

資本金(株式会社)の場合、その財産は出資者(株主)のものです。事業のために準備した資金は、株主から出資を受けているのか、会社の事業で自ら生み出したものなのか、明確に区別する必要があります。
そのため、資本金は原則、増資・減資しない限り一定で変化はありません。毎年同じ金額となります。

個人事業主の場合、個人という一人の人格の中にプライベートと事業の2つを併せ持ち、事業用財産は個人財産の一部を切り取ったという見方になります。
個人事業主は事業とプライベートで資金を自由にやり取りすることが可能、と前述しましたが個人事業で得た利益を事業にまわすもプライベートにまわすも自由なのです。
事業のために準備した資金(元入金含)は自由に出し入れ可能なため、毎年金額が変わることになります。詳しくは後述します。

(2)元入金の特徴:利益の積み上げ

個人事業主は、事業で生まれた利益は元入金として積みあがっていきます。
一年間の利益金額や事業主勘定残高は毎期更新する必要があります。
期末の損益や事業主勘定の残高を元入金勘定へ組み込み(参入)します。

(3)元入金の特徴:元入金はマイナスになる

業績が悪く、利益より損失が大きくなると元入金は減少します。
前述した「利益の積み上げ」と逆のことが起こり、元入金がマイナスになります。

元入金のマイナスは、基本的にイメージはよくありません。ただし本当に事業が悪化しているのか、お金を使いすぎているのかは不明瞭です。(個人事業主は資金を事業とプライベートでやり取り可能なため)

元入金は意図的に増減できますが、基本的にまわりからのイメージはよく思われない、と思って事業の見直しなどを行ってみる必要があるでしょう。

個人事業主の元入金と法人の資本金との違い

(1)当年損益の処理

元入金(個人事業主)→当年損益は翌年元入金に参入。
資本金(法人)→当年損益は翌年に資本金に参入されず、利益剰余金として資本金と区別される。

(2)金額の変動

元入金(個人事業主)→損益で金額が毎年変動する。
資本金(法人)→資本金額は原則固定。増減したい場合には増資、減資の必要あり。

(3)マイナスになる可能性

元入金(個人事業主)→マイナスになる可能性がある。
資本金(法人)→1円以上で、マイナスにはならない。

「事業主借」(元入金と事業主借の違い)

元入金は個人事業主が事業のために準備した資金という意味の勘定科目ですが、似たような科目に「事業主借」という勘定科目があります。
事業主借はプライベート(ポケットマネー)から事業に対してどのくらい資金を投入したのか、ということを表す勘定科目です。また、預金に利息が発生した場合などにも使用します。事業用の資金が増えた理由を、事業事由とした利益と区別するために使用します。
元入金は事業を始めた期首のみに使用するため、それ以後の仕訳には使用せず、また変動は起こりませんが、期中に個人事業主のお金を事業に充てると、その都度事業主借の勘定科目として発生します。

個人事業主(フリーランス)に元入金は必要なのか



元入金は個人事業主やフリーランスが開業するときの事業資金に充てるものであると前述しましたが、昨今、仕事環境の変化により、フリーランスとよばれる業種では開業資金は少額で済むケースも多くなっています。そのような環境の中、開業資金として元入金をする必要はあるのでしょうか。

結論から申し上げると、事業の大小にかかわらず、帳簿付けを行う以上、元入金は必要です。
個人事業主として事業を行う上で、青色申告で帳簿付けを行い、貸借対照表を作成する必要があります。そのためには必ず元入金が必要となってきます。
白色申告や10万円控除の青色申告では貸借対照表を作成しないため、元入金を使用せず事業主借で代用も可能です。

まとめ

今回は開業に不可欠な元入金について解説しました。
これから独立して個人事業主やフリーランスになる方々にとってはとても大切な項目なので、要点をしっかり理解してお金の流れを把握しておく必要があると考えます。