2019.04.16

役員報酬変更手続きが必要になったら覚えておきたいポイント

役員報酬

会社設立時、役員に対して支給される「役員報酬」を決めることが必要です。
従業員(会社との雇用関係があるもの)に対しては労働の対価として給与が支払われることを指します。
経営者は役員報酬を自由に決め、いつでも変更できる。と思われている方は意外と多いのではないでしょうか。
いつでも自由に変更可能だと、ひとり社長や、オーナーと社長を兼任している場合など、自分の報酬を自分で決めることになるため、身内役員に不当な高すぎる報酬を支給し、役員報酬を調整することで会社の税金を減らそうということができてしまいます。
このようなことにならないよう、税務上、従業員の給与と、役員報酬では取り扱いが異なり、役員報酬の確定や変更含め、役員報酬に関しては一定のルール(制限)が設けられています。

役員報酬の決定・変更のルール

(1)3か月ルール

原則として、役員報酬は会社設立後、もしくは事業年度開始日から3か月以内に決定しなければなりません。
会社設立時には売上の見通しが立たず役員報酬を決めることは難しいことかもしれませんが、報酬金額によって社会保険料・所得税・地方税など税金が大きく変動するため、慎重に検討すべきでしょう。

(2)定期同額給与(毎月同額)

役員報酬は原則として1年間、毎月一定額が支払われるものであることが必要です。

(3)役員報酬変更

役員報酬を変更したい場合、会社設立時もしくは事業年度から3か月以内であれば1回だけ変更手続きが可能です。
具体的な手順としては、株主総会などで役員報酬の検討・変更を決定し、株主総会議事録を作成します。(合同会社の場合には同意書や決定書)
議事録などには、税務調査に入られた場合に、損金算入を否認されて、追加で納税しなければならなくなる可能性を回避する効果があります。

事業年度の途中で役員報酬の変更手続きを行う場合には、臨時株主総会を開き、役員報酬の検討・変更を決定し、株主総会議事録を作成します。(合同会社の場合には同意書や決定書)
役員報酬を事業年度の途中で減額したい場合、国税庁は「経営状況の悪化に伴って、株主や債権者、取引先等との関係上、役員報酬の額を減額せざるを得ない事情が生じている場合」は特別に減額、損金に算入することができるとしていますが、事業年度途中での役員報酬の変更は、減額であっても原則は認められてはいません。

職責の変更により役員が昇格した場合、事業年度途中でも役員報酬の増額が認められます。
この場合、原則、損金不算入(税金減額不可)となります。
役員報酬増額は、節税対策の利益操作とみなされるためです。
増額により全体の役員報酬金額が株主総会で決議された金額上限を上回る場合には、新たに株主総会決議が必要になってきます。

(4)社会保険の月額変更届

役員報酬の変更金額が大きい場合、社会保険の月額変更届の提出が必要です。
具体的には社会保険の「標準報酬月額」等級が2等級以上増減する場合、日本年金機構に「被保険者報酬月額変更届」が必要です。

役員報酬の支払い方法

役員報酬を損金計上するには、役員報酬の支払い方法が限られます。
具体的には以下の3つであれば損金計上可能です。
それ以外の方法だと、損金計上できない恐れがあります。
また、金額に関しては法人税の申告を行う際、書類に記載する必要があるので、各給与の内容をきちんと把握しておきましょう。

(1)定期同額給与

前述した通り毎月支払われる一定額の給与です。

(2)事前確定届出給与

賞与として支払われる給与です。
2019年2月現在では、下記条件を満たせば役員への賞与を損金計上できます。

「事前確定届出給与に関する届出書」の所轄税務署への提出
届け出た内容と同じ日時・金額で、役員へ賞与を支払うことが条件です。
税務署への届出期限は下記いずれかのうち早い日となります。
  • 事業年度が始まる日から4ヶ月以内
  • 株主総会、取締役会で決議した日から4ヶ月以内
  • 会社設立時には、設立から2ヶ月以内

(3)利益連動給与

有価証券に記載のある「利益に関する指標」に基づいて支払われる給与です。
ただし以下の場合には認められません。
  • 株主が経営者1人である場合
  • 株主が同族のみで構成されている場合

(4)役員報酬と役員賞与

役員報酬:役員に対する給与のこと。(賞与や退職賞与を除く)
役員賞与:役員に対して臨時で支払う給与のこと。(退職賞与は該当しない)

役員にも賞与を支給することは可能ですが、会社設立後2か月以内、翌事業年度以降は事業開始または株主総会決議・取締役決議から4か月以内、役員賞与を決議した株主総会から1か月以内に税務署に届け出を行う必要があります。

まとめ

利益が出たから役員報酬を増額したい、赤字だから役員報酬を減額したい、などという発作的な行動は大変危険です。
役員報酬のルールをよく理解し、余計な税金を払わなくて済むようにしましょう。