賃貸借契約のチェックポイント

ポイント4:共益費と管理費の違い

共益費と管理費の違いについて、インターネット情報はあまりにもいい加減であることに驚いています。
例えば、オフィスビルの場合が共益費、マンションの場合が管理費で、それは呼び名の違いだけであって同じであるというもの。また共益費も管理費も賃料の一部で、見た目に賃料を安く見せるために賃料と共益費、管理費を分けているにすぎないというものもあります。
そんなことはありません。本来、共益費と管理費は違うのです。ではそれについて述べます。

1. 共益費とは


まず、共益とは共同の利益のことです。そこで共益費について、民法306条1は「共益の費用にて生じたる債権を有する者は、債務者の総財産の上に先取特権を有す」とし、これを受けて民法307条1は「共益費用の先取特権は各債権者の共同利益のために為したる債務者の財産の保存、清算または配当に関する費用に付き存在する」、そして同条2は「前項の費用中、総債権者に有益ならざりしものについては先取特権はその費用のため利益を受けたる債権者に対してのみ存在する」と規定しています。
これをもとに、貸ビルの場合の共益費は、入居者が共同で利益を受け、共同でその債務を負わなければならない玄関・廊下・階段・エレベーターなどの共用部分の維持管理、及び共用の給排水や電気や防災の設備、そしてセキュリティ(機械警備、常駐警備など)に係わる費用を指しています。
つまり専用使用する室内の賃料とは別ということです。
従って、共益費には家賃の請求など、経営に係わる個人の利益の費用は含んでいません。例え、複数の所有者がいる区分建物であったとしても。
また、賃料は借地借家法の適用を受け、改定には貸主・借主間で協議の成立が必要ですが、しかし共益費は電気料金などの公共料金などの変動に合わせ、借地借家法の適用を受けずに改定できます。ゆえに賃料と共益費(=管理費も)を分けます。 ちなみに欧米の場合、建物の賃貸借は、日本で平成7年から取り入れた定期借家契約のことをいい、その場合、賃料は契約期間と同時に契約時に決められ、そしてフィックスされます。つまり契約期間内の賃料改定はありません。ゆえに、賃料と共益費(=管理費)を分けます。そして契約期間内の改定は共益費(=管理費)だけが対象となります。


2. 管理費とその問題点


管理費は貸マンション、分譲マンションだけではなく、工事の管理などにも使用される一般用語です。従って、法的に先取特権を持っておりません。ここに共益費との違いがあります。
貸マンションの場合、管理費は玄関、廊下、階段、エレベーターなどの共用部分、及び電気設備・消防設備、及び機械警備、または常駐管理人などのセキュリティなどの費用で、その内容は貸ビルの共益費とほとんど同じです。
一方、分譲マンションの場合は、貸マンションと同様の維持管理のほかに、管理組合の運営費用(事務費や管理運営に係わる役員の手当て)などが入ります。ここに大きな問題があります。
なぜなら、今あちこちの分譲マンションで管理費の滞納が発生しているからです。 分譲マンションこそ、管理費ではなく先取特権のある共益費にすべきなのです。


3. 共益費・管理費は実質賃料の一部


共益費、管理費は法的には賃料ではありません。でも、借家人から見れば実質賃料の一部です。
その物件が安いか、高いかは共益費、または管理費の内容と金額によって決まります。そのチェック方法については、個別に、ご相談下さい。
ただ言えることは、貸ビル・貸マンションが小規模の場合、徴収する共益費、管理費では共用設備・共用部分の維持管理費をまかなえず赤字であるために、家賃で補填しているケースが多いということ。また大規模な貸ビル・貸マンションの場合には多少余剰があることです。
これは共益費・管理費を実費ではなく、単に比準価格で決めているからです。 ちなみに、弊社ではそういった問題の解消に向けてコンサルティングし、ビル経営の健全化を推進しています。





ポイント1:契約面積についてポイント2:契約期間の更新と終了ポイント3:更新料についてポイント4:共益費と管理費の違いポイント5:敷金と保証金の違いポイント6:解約時償却と敷引きについてポイント7:物件の明け渡しと原状回復について

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